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加納光於(1933- )


版画、絵画の領域において実験的手法により独自の世界
を切り開いたことで知られる。瀧口修造、大岡信、澁澤
龍彦、渋沢孝輔、加藤郁乎、吉増剛造、巖谷國士、平出隆ら、
文学者との交流や仕事も多い。

東京、神田に生まれる。病弱のために中学を中退、10代後
半を闘病生活のうちに過ごす中で微生物や植物の形態に
関心を寄せ、またアルチュール・ランボーなどフランス
詩に傾倒。1953、19歳のときに独学で版画をはじめ1955
に私家版銅版画集「植物」を出版。瀧口修造に見いだされ
、彼の推薦で1956にタケミヤ画廊にて初個展を開催する。
東京国際版画ビエンナーレには第1回(1957)から出品し、
3回展(1962)では亜鉛版を腐食させたモノクロームのイ
ンタリオ「星・反芻学」(1962)で国立美術館賞を受賞した。
その他国内外の数多くの展覧会に出品し、受賞を重ねる。

1960代後半には、金属板をバーナーで焼いて加工した凹
凸の激しい版に鮮やかな色彩で刷られた《ソルダード・
ブルー》や《半島状の!》などのカラーメタルプリント
の仕事を行う。

1970代前半は図鑑などから切り取られた断片的なイメー
ジをコラージュ的発想で詩的に構成する仕事を中心に行
うとともに、オブジェなどの仕事にも取り組んだ。

1970代後半には《稲妻捕り》に代表される、デカルコマ
ニー的な手法によって流動感のある鮮烈なイメージの湧
出を定着させる仕事に移った。
1980には初の油彩画展を開催し、その後は、インタリオ
やリトグラフによる版画作品の制作を差し挟みつつ、油
彩画を中心として精力的に発表を続けている。

加納光於年譜

1933 東京神田で生まれる
   病弱のため十代後半を療養生活で過ごす

1953 瀧口修造を知る
   銅版画の制作を始める

1956 タケミヤ画廊(東京)で初個展
   以後内外の版画展に参加する

1957 第1回東京国際版画ビエンナーレ展に出品

1959 第3回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展で《燐
   と花と》により「リュブリアナ近代美術館賞」受賞
   澁澤龍彦「サド復活」(弘文堂)に初の装幀挿画を行う

1961 第6回日本国際美術展で「翼予感」により優秀賞受賞

1962 第3回東京国際版画ビエンナーレで《星・反芻学》
   により「国立近代美術館賞」受賞
   加納の制作の特徴のひとつが「連作」である、ある期
   間ひとつの手法による作品を多数制作し、ある時点
   でその成果を発表すると、また新たな方向を模索し
   始め、そして素材と作品の関係の探求した

1964 版の素材として使用していた亜鉛合金をガスバーナ
   ーで焼いて版そのものを作品とした「MIRROR33」と
   「ソルダーブルー」の連作で新しい技法による作品
   を開拓する

1965 第8回日本国際美術展で《星・反芻学》により優秀賞
   受賞

1966 「半島状の!」シリーズから後期ルドンのように色彩
   が加わる
1969 第8回リュブリアナ国際版画ビエンナーレで「Planet
   Mirror B」により買上賞函形立体のオブジェ作品制作
   版画、ではコラージュやフロッタージュを援用して一
   層多様な展開をみせ、画集形式で発表した
1971 「戦後美術のクロニクル展」(神奈川県立近代美術館)

1972 南画廊で「"加納光於−大岡信共作展"アララットの
   舟あるいは空の蜜」展開催

1974 「葡萄弾」により造本装幀コンクール展で文部大臣
   賞受賞

1976 デカルコマニーを利用したリトグラフ連作「稲妻捕
   り」製作

1980 油彩画のはじめての作品群を個展
   「胸壁にて」として発表(アキライケダギャラリー)
   「加納光於の版画-瀧口修造とともに」(福岡市美術館)

1983 北九州市立美術館で「加納光於PAINTING 1980-1983」
   展開催

1997 「葡萄弾-加納光於オブジェ1968-1997」(愛知県美術館)

1988 O美術館で「加納光於1977-1987「版画」《強い水-夢
   のパピルス》」展開催

1992 「本の宇宙−詩想をはこぶ容器」(栃木県立美術館)

1993 「色彩としてのスフィンクス−加納光於」(セゾン美術館他)

1995 「戦後文化の奇跡 1945-1955」(目黒区美術館他)

1997 愛知県美術館で「葡萄彈 加納光於 オブジェ 1968-1997」
   展開催
   第8回山口源賞で「《Circle-波打つ眉をしずめよ》・5」に
   より大賞受賞

1998 「瀧口修造とその周辺」(国立国際美術館)
   紫綬褒章受章

2000 「加納光於 《「骨の鏡」あるいは色彩のミラージュ》」
   (愛知県美術館)

2005 旭日小綬章受章
   「リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展」
   (リュブリアナ スロヴェニア)

2006 「武満徹 Vision in Time 展」
    (東京オペラシティアートギャラリー)

2007 「澁澤龍彦−幻想美術館」(埼玉県立近代美術館)

2012 神奈川文化賞受賞

2013 「加納光於 色身――未だ視ぬ波頭よ 2013」展開催
   (神奈川県立近代美術館)

2017 「加納光於―揺らめく色の穂先に」展開催
   (CCGA現代グラフィックアートセンター)

主な作品
星・反芻学(1962):インタリオ
MIRROR,33(1965):亜鉛版によるレリーフ
ソルダード・ブルー(1965):カラーメタルプリント
半島状の ! (1967):カラーメタルプリント
葡萄彈(1973):オブジェ
稲妻捕り(1977):色彩石版画
語りえぬもののための変容(1978):
エンコスティック、メタルプリント
胸壁にて(1980):油彩
「波動説」intaglioをめぐって(1984):カラーインタリオ
Illumination-1986(1986):色彩石版画
繁み・運動・エレメント(1988):油彩
Circle-波打つ眉をしずめよ(1996):モノタイプ

出版物
1955 銅版画集『植物』(私家版)
1967 瀧口修造編『KANO 加納光於』(南画廊、特装版あり)
   『みづゑ』7月号(オリジナル石版画)
1968 土方巽舞踏展詩画集『あんま』アスベスト館
1970 『加納光於集(現代版画)』(筑摩書房)、渋沢孝輔
   詩集『漆あるいは水晶狂い』(思潮社、特装版あり)
1971 画集『人間と文明』(《オーロラの反応U》)
   (富士ゼロックス)
1972 大岡信・加納光於共作『アララットの船あるいは空の蜜』
   オブジェ(青地社)
1972 『螺旋都市<秘冊草狂>3』大岡信・詩、加納光於・絵
1973 『加納光於 葡萄弾―遍在方位について 』(美術出版社)
1974 『漂流物 標本函』オブジェ(エディシオンエパーヴ)
   『gq』7号(特装版あり)
1975 『加納光於 PTOLEMAIOS SYSTEM 翼・揺れる黄緯へ』
   (筑摩書房)
   『索具・方晶引力』リーブル・オブジェ、大岡信詩集を収む
   (書肆山田)
1976 「KANO mitsuo-<1959>」(林グラフィクプレス)
1977 「石版画集《稲妻捕り》-1977」(南画廊)
   『漂流物』U号《ウルビーノ頌》(林グラフィックプレス)
1978 彩色版画集「塩の柱、あるいは舞台衣装のためのCODEX」
   (林グラフィックプレス)
   瀧口修造との詩画集『《稲妻捕り》Elements』(書肆山田)
1979 瀧口修造との詩画集『掌中破片』(書肆山田)
   『粒子と雷鳴』瀧口修造に(私家版)
1981 エンコスティックによる連作画集『語りえぬもののための
   變容』(小沢書店)
1983 《耳あるいは西方へ》日仏会館ポスター2種
1986 色彩石版画集「《Illumination-1986》」(ギャラリー上田)
1987 《強い水―夢のパピルス》(KANO & ATRIUM)
1992 『加納光於KANO mitsuo 1960-1992 paintings;prints』
   全三冊(小沢書店、限定版あり)
   ポートフォリオ《開け、遮るものよ》(KANO & ATRIUM)
   ポートフォリオ《青ライオンあるいは<月・指>》
   (KANO & ATRIUM)
1993 エッセイ集『夢のパピルス』(小沢書店)
1994 《月の視力をもって》I-XI(KANO & ATRIUM)
   《吹雪いて来るもののすべてに》I-XI(KANO & ATRIUM)
1995 ”Hyogo aid by art”ポスター
2000 KANO mitsuo 個展ポスター(愛知県美術館)
2002 カラーインタリオ版画集「招雷記」(KANO & ATRIUM)
2004 カラーインタリオ版画集「セルペンティナータ」(KANO & ATRIUM)
2006 インタリオ版画集「汝、その噴水を避けよ」(KANO & ATRIUM)
2007「詩画集《雷滴 その研究》 平出隆+加納光於」(書紀書林)

主要参考文献
『GQ』7号(特集・加納光於)1974
『みづゑ』876号(特集・加納光於)1978
大岡信『加納光於論』書肆風の薔薇 1982
『版画芸術』76号(特集・加納光於)1992
『Poetica』臨時増刊(特集・加納光於)1992
『加納光於1960-1992』全3冊('60-92 prints, '80-91
paintings, Catalogue raisonne & documents)
小沢書店、1992
『水声通信』8号(特集・加納光於)2006
馬場駿吉『加納光於とともに』書肆山田 2015
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